Top・序 /ご案内/ 第1部 @概要 |A調査研究 |B踏査報告   第2部 SF奇譚「天狗の麦飯」 @前編 |B後編

詳解:
謎の天然記念物
天狗の麦飯
天狗の麦飯の謎を追う
 淡灰緑色・褐色など粘質粒状でササなどにおおわれた地表に生じる。藍藻類の藻や糸状菌などの集まりで、古くから食用とされ、飯粒・飯砂・味噌土・糠土などとよばれていた。中部地方の戸隠・黒姫・飯綱・浅間などの火山性の高地に生える。石炭が燃える土として知られたように、「てんぐの麦飯」は「食べられる土」とか「餓鬼の飯」といわれていた。飯綱は飯砂から転じたという
ミステリー調査員
Ameha Brothers
    [構成]  
  Top  序文

  第1部 @ 天然記念物としての天狗の麦飯 概要 
       A 天狗の麦飯の過去の調査・研究について
       B 実地踏査報告 


  第2部 SF奇譚「天狗の麦飯」
       @ 前編
       A 後編

       

味噌土?

 この項はムギメシを裸にすることではなく あくまで謎解きを楽しむ気持ちで読んでいただけたらと ネッシーや月のウサギのようにあからさまにすることは本意ではないので 具体的な写真や地図などは控えております m(_ _)m 



[ 序 ]

 小学生のころ佐久には珍しいものが二つある。一つは「光り苔」もう一つは「天狗の麦飯」という話しを耳にした。面白い名前だなとなにか心に惹かれるものを感じた。浅間山東麓の鬼押出しの溶岩洞窟の中や岩村田の鼻顔稲荷近くで光り苔は見る機会があった。まだランプのころだったので、光るものは苔よりホタルやヤナギの根などの方に興味があった。根が光るのは新しい傷に細菌がついて発光するらしいのだが、ヤナギは墓のそばにあっただけに子ども心には神秘的でさえあった。

 たしか小諸の裏手の菱野温泉のあたりの山道だったと思う。草の少ない荒地のチガヤの根のあたりに薄汚れた大豆の根につく根粒菌のようなものを見たことがある。父が天狗の麦飯かもしれないよと話してくれたのが記憶にある。それから長い年月が過ぎた。10年ほど前にホームページを作るにあたり何気なくタイトルには天狗の麦飯という語が浮かんだ。なんだかわからないものという意味でも言いえているような気がした。数年前に父の伝記を書こうと足跡を追い始めた。明治・大正・昭和と激動の時代を生きてきた父の姿を、後ろからではなく正面から見据えたいと外地に渡った父の夢を追って韓国へも2度ほど足を運んだ。

 リタイアしてからは隔週で田舎に向かい、そこでの畑仕事の合間に佐久周辺の山々を歩き回るようになった。そして何か惹かれるものを感じて東小諸の味噌塚を何度となく訪れていた。市役所・県庁・文部科学省などの教育委員会や文化財課などを訪れては資料を漁っていたときだった。そこに保科百助の名を見つけたのだった。地質学者で信濃の教育者としてユニークな存在であり五無斎と称していた。彼が東大の研究室に初めて天狗の麦飯を持ち込んだ張本人かもしれないと。

 私の父に外地への夢を抱かせたものは・・と調べていて突き当たったのが、長野にあった保科塾に学んだことがあるという一節だった。私は父が五十歳近くになってもうけた通称ハチナデと呼ばれる晩年の子だったから、父の若いころの姿などは見たこともないのだった。ひょっとすると父は保科塾で学んでいるときに五無斎に天狗の麦飯の話を聞いていたのではないか。だから、菱野のあたりでみつけた標本を天狗の麦飯ではないかと言いえたのかもと。

 こうなると何が何でも知りたい見てみたいと聞き込みを続けながらあちらこちらと浅間の山域を歩き回った。ある程度の痕跡や情報は掴んだが、やたらに公表するべきものでもないかもしれない。とりあえずオブラートを着せてある程度までを書いてみることにした。天狗の麦飯はネス湖のネッシーとは違い現実の夢物語なのだからある程度は許されるだろう。荒される恐れがあるとはいえ決して言及してはならないものではないと思う。明治・大正・そして昭和の初期の先人たちは研究に行き詰まったために「味噌塚」を保護地として定め、後世の研究者たちに詳細な分析と研究とを託したわけなのだから。



 以来半世紀にわたり麦飯は時の流れに身をゆだねて深い眠りについていた。いや、消えてしまったという説もある。冬場だけとか寒冷期にしか活性化しないのではとか。なにしろ本体が掴めていないのだから、どのような形で現れていようともそのものが麦飯であるという確証すらないところが面白い。

 分析の結果からは食えないことはないが栄養になるというものではない。ネズミによる動物試験からも栄養上はほとんど無価値のものとされた。そして、生活のエネルギーを何に求め、いかにして増殖が行なわれるのかその生態すら明確ではない。安山岩を酸化分解してそのエネルギーを同化作用に使うという説もある。

 この02年になって増田氏が大野氏の業績を著したことで、麦飯にも目を覚ますトキが訪れたのではないかと思う。東大の研究室に当時のサンプルがどんな形であれ保存されていれば現代の分析技術をして遺伝子のマップから同定できるかもしれないと。そして、カスピ海ヨーグルトのケフィアなどとの関連も気になるところである。(コーカサス地方にも麦飯に似たものがあるとか)
  


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